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「JC-STAR」とは?Wi-Fiルーターの安全性を高める新しい基準と選び方
近年、IoT機器の普及が急速に進み、家庭や企業でWi-Fiルーターをはじめとするネットワーク機器が不可欠な存在になっています。しかしその一方で、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクも増加し、セキュリティ対策が大きな課題となっています。そんな中、2024年9月に発表され、2025年3月から運用が始まった新しいセキュリティ制度「JC-STAR」が注目を集めています。今回は、IPA(情報処理推進機構)が運用するこの制度について、Wi-Fiルーターを安全に使うためのポイントとともに詳しく解説します。
JC-STARとは何か
JC-STARは「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(Labeling Scheme based on Japan Cyber-Security Technical Assessment Requirements)」の略称で、経済産業省の主導のもと、IPAが運用するIoT製品向けのセキュリティ適合性評価制度です。
この制度は、「ETSI EN 303 645」や「NISTIR 8425」といった国内外のセキュリティ規格とも調和しつつ、日本独自の基準でIoT製品のセキュリティレベルを評価・可視化することを目的としています。つまり、JC-STARのラベルが付いた製品は、一定のセキュリティ要件を満たしていることが保証されるのです。
JC-STARの特徴とメリット
1. セキュリティレベルの可視化
JC-STARでは、IoT製品がどの程度のセキュリティ要件を満たしているかを「★」の数で分かりやすく表示します。現時点では「★1」~「★4」の4段階があり、★1は最低限のセキュリティ要件を満たすもの、★4はより高度なセキュリティ要件を満たすものとなっています。
2. 適合ラベルの導入
適合した製品には、「JC-STAR」のロゴと星の数、二次元バーコードが表示されたラベルが付与されます。このバーコードをスマートフォンなどで読み取ることで、製品の詳細や適合評価、セキュリティ情報、問い合わせ先などを簡単に確認できます。
3. 自己適合宣言と第三者認証
★1および★2はベンダーの自己適合宣言に基づいてラベルが付与されます。今後は、より高いレベルに向けて第三者認証も導入される予定です。
Wi-FiルーターのJC-STAR対応で何が変わる?
バッファローなど主要メーカーのWi-Fiルーターが、JC-STAR「★1」の適合ラベルを取得し始めています。対応商品には、法人向け・個人向けともに以下のようなセキュリティ機能が実装されています。
- 管理画面ログインの強化
- 個人向け: ログインパスワードの初期値を固有化
- 法人向け: 初期設定時にログインパスワードの変更を必須化
- ログイン試行回数の制限
- 誤ったパスワードで連続してログインが試みられた場合、一定期間アクセスを制限
- 設定値の暗号化
- ルーター内に保存される設定情報を暗号化
- ファームウェア自動更新
- 重要なセキュリティ関連アップデートを自動的に適用
- サポート期間内のアップデート提供
- サポート期間中は常に最新のセキュリティアップデートが提供される
- 設定初期化機能
- 設定を工場出荷状態に戻す機能を標準装備
- サプライチェーンセキュリティ
- 設計・製造プロセスでのマルウェア混入リスクの回避
これらの機能により、従来よりも格段に安全なWi-Fiルーターの利用が可能になります。
なぜJC-STAR対応ルーターが必要なのか
近年、ネットワークカメラやWi-FiルーターなどIoT機器を狙ったサイバー攻撃が急増しています。IPAの調査によると、パスワードが初期設定のままだったり、脆弱性を放置したままの機器が多く、これが不正アクセスや情報漏洩の原因となっています。
たとえば、2017年には並行輸入品のネットワークカメラに複数の脆弱性が見つかり、パスワードを変更しても不正操作が可能な状態になっていた事例や、2018年には全国で60台以上の監視カメラが不正アクセス被害に遭った事例が報告されています。また、2023年時点で日本国内だけでもパスワード未設定の監視カメラが629台もインターネット上に公開されていたという調査結果もあります。
このような背景から、JC-STARのようなセキュリティ基準を満たした製品を選ぶことが、サイバー攻撃から身を守るための有効な手段となっています。
実際にJC-STAR対応ルーターを選ぶポイント
JC-STAR対応のWi-Fiルーターを選ぶ際には、以下のポイントを意識しましょう。
- 適合ラベルの確認
- パッケージやメーカーサイトに「JC-STAR」のラベルがあるかを確認
- 二次元バーコードで詳細情報をチェック
- セキュリティ機能の内容
- パスワードの初期値や変更に関する仕様
- ファームウェアの自動更新機能
- サポート期間やアップデート提供の有無
- 用途に合わせた選択
- 個人利用なら「個人向け」、法人利用なら「法人向け」のモデルを選ぶ
バッファローは、JC-STARの適合基準や評価手順の策定にも関与しており、法人向け20シリーズ76型番、個人向け1シリーズ3型番が対応しています。
JC-STAR制度の今後
JC-STARは、海外の類似制度との相互認証も目指しており、今後さらにグローバルなセキュリティ基準として発展していく可能性があります。また、★3や★4といったより高いレベルの適合基準も今後導入される予定です。
まとめ:安全なWi-Fi生活のために
IoT機器の普及とともに、サイバー攻撃のリスクはますます高まっています。JC-STAR対応のWi-Fiルーターを選ぶことで、管理画面への不正アクセスや設定情報の漏洩、マルウェア感染などのリスクを大幅に軽減できます。
これからWi-Fiルーターを購入する際は、ぜひ「JC-STAR」のラベルを確認し、安全なネットワーク環境を構築しましょう。また、既に利用中のルーターも、メーカーのサポート期間やアップデート状況を定期的にチェックし、必要に応じてJC-STAR対応モデルへの買い替えも検討してみてください。
JC-STAR対応のWi-Fiルーターを選ぶことで、安心・安全なインターネット生活を手に入れましょう!
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