VDIより構築工数もコストも大幅ダウンが期待できる「リモートPCアレイ」という選択肢


岡山市役所における「リモートPCアレイ」導入事例とその先進的意義

2025年6月、岡山市役所はマイナンバー系・LGWAN系・インターネット系に加え、後期高齢者医療広域連合システム専用端末を含む複数ネットワーク環境下で職員1人あたり3台以上のPCを使い分ける現状を改善すべく、アセンテック社製「リモートPCアレイ」を導入した[1]。

導入の背景と課題

岡山市では自治体DX推進の一環として情報セキュリティを強化するため、ネットワークを「三層分離」構成にしていた。しかし職員は各ネットワークごとに端末を使い分ける必要があり、デスクスペースが逼迫。端末切替えによる業務中断で生産性も低下し、ハードウェア管理コストも増大していた。

特に後期高齢者医療広域連合電算処理システム専用端末が40台存在し、実質4台端末運用となるケースもあり、抜本的な端末集約の必要性が高まっていた。

リモートPCアレイとは

「リモートPCアレイ」は、1シャーシ内に複数台の物理PCカートリッジを搭載し、ハイパーバイザーを廃したアセンテック社独自のVDI代替ソリューションである[2]。

  • ハイパーバイザー不要により構築期間約70%短縮
  • 初期導入コスト約50%削減
  • 1ユーザー1カートリッジ割当てでパフォーマンス安定
  • 保守運用コンポーネント削減でコスト低減
  • ダウンタイムなしのシャーシ単位拡張

技術構成と管理機能

最新モデルは第14世代Intel Core Ultra 5を含むCPUカートリッジを採用し、Windows 11対応。遠隔KVM機能でカートリッジのBIOS設定・OS操作が可能となり、管理ツール「Atrust Chassis Manager(ACM)」でシャーシ・PCカートリッジ双方をGUI/CLIから統合監視できる[2]。

導入プロセス

岡山市役所ではNTTデータ中国とともに、物理端末継続利用、従来型VDI、リモートPCアレイの3案を比較検討。検証機による互換性テストの結果、コスト・メンテナンス性で優位と判断し正式導入を決定した。

導入効果

①デスクスペースの確保

40台あった専用端末をリモートPCアレイへ集約し、デスク上端末台数を大幅削減。職員は手元の1台端末から各ネットワーク業務にリモート接続可能となり、作業スペースを大幅に拡張した。

②業務効率の向上

端末切替えの煩雑さが解消し、ログオン後すぐに各システムへシームレスアクセス。検証では業務時間が約15%短縮された。

③セキュリティレベルの維持

データはサーバールーム内PCカートリッジに残存せず、端末紛失時の漏洩リスクを低減。マイナンバー系と同等の強固なセキュリティレベルを確保できた。

④運用管理の簡素化

ACMによる一元管理で、OS更新・故障時のカートリッジ交換作業を迅速化。従来型VDIと比較して運用負荷を約30%削減した。

他自治体での導入事例

宮崎県西都市役所では2024年2月、三層分離環境下の個人番号利用事務系PC2台をリモートPCアレイへ集約し、業務スペースと管理コストを削減。ICカード二要素認証による高セキュリティを実現した[3]。

さらに埼玉県八潮市役所や佐賀市役所、多摩市役所でも同製品を導入し、三層分離対応とテレワーク基盤強化を進めている。

自治体DXの文脈での意義

総務省が推進する「自治体DX推進計画」では、情報システムの標準化・共通化を2025年度までに達成目標としている。リモートPCアレイはマイナンバー・LGWAN・インターネットの統合運用モデルケースとして、他自治体への横展開が期待される。

また、将来的なガバメントクラウド移行時にも、物理PCリソースの集約基盤として橋渡し役を果たす可能性が高い。

まとめ

岡山市役所の「リモートPCアレイ」導入は、三層分離下の多端末運用課題を解消し、スペース確保・業務効率化・セキュリティ強化・運用簡素化を同時に実現した先進的事例である。今後も他自治体への展開が加速し、自治体DXの重要な基盤技術となることが期待される。


参考リンク

  1. 岡山市役所が「リモートPCアレイ」を導入、職員1人で3台の端末使用を仮想デスクトップに統合(Yahoo!ニュース, 6/25配信)
  2. アセンテック リモートPCアレイのご紹介(株式会社アスク)
  3. 宮崎県西都市役所が「リモートPCアレイ」導入–PC2台持ちを解消(ZDNet Japan, 2025/2/13)
  4. リモートPCアレイ100 – イグアス ソリューションポータル

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